キッチン
キッチン
台所はおもしろい。
通常の住まいでは、唯一ものをつくる場所が台所。そういう意味では特別な場所といえる。住まい全体の中での配置や居間との関係、どっちを向いて作業をするか、一人の場所か複数人が使うのかからはじまり、電気製品はなにをどの場所に、収納はどういったかたちでと数え上げればきりがない。一方でこれが正解という解答があるわけでもなく、当然ながら、その家その家、その人その人での考え方やこだわりがある。
多様で、複雑な動きをする場所である為、詳細に検討することは大事だが、だからこそ「そもそも論に立ち返り考えること」や「使いこなす意識を持つこと」が重要と再認識する。
料理好きの方の要望は明快でシンプルなことが多い。台所に求める機能の優先順位がはっきりしていることがその要望のシンプルさにつながっているのだろう。
中には、こんな要望も。
「炭を使ってサンマを焼きたいんです。煙がうまく排気できるそうした場所ができますか?」とか
「アパートみたいでかっこ悪いのは承知ですが、瞬間湯沸かし器をつけてくれませんか?なんだかんだいっても熱湯をいちばん早く手元に出すのはこの方式ですから。」とか
「混合水栓はいりません、お湯のでる単水栓と水の出るものを別々に2本立ててください。混合水栓で温度を微調整する必要はないですから。」とか
「とにかく火力の強いコンロを使いたいので、業務用のもの設置できますか?」とか
「カウンタートップの半分は木で、半分はタイルになりますか?」とか、みなさんのこだわりは本当に様々で興味深い。と同時にその理由にはそれぞれ説得力がある。
パッケージ化されたシステムキッチンでなくやはり自分流の台所にしたいものだ。
オーガニック料理で有名なアリス・ウォータースの自宅拝見的なTVを見たとき、彼女の家の台所流しは銅でできていた。ちらりとしか映らなかったが、あれは確かに銅製であったと思う。温度変化による変形の大きい銅は昨今シンクとしての既成品はお目にかかれないが、使い方を間違えなければ銅のシンクは衛生的にも合理的。なるほど!と納得した次第。アリスファンの方はチャレンジしてみるのも一考かも。
置き屋根
置き屋根
置き屋根は良い!
置き屋根とは屋根を二重に葺く(屋根をダブルスキンとする)工法のひとつ。
伝統的工法で日本各地で見ることができる。形状から想像すればすぐ解ることだが、台風や強風の影響を受ける太平洋沿岸地域にはない。中部地方の山間部から日本海側にかけて良く見かける。しかしながら研究調査や文献が極めて少ないので全貌はわからない。わたしが知るかぎりでは、主に倉に採用されている。住まいで採用されていることはあまりない。それにはいくつかの推測が成り立つ。1 倉は内部の容積をできるだけ確保するため小屋裏空間がないものが標準的。したがって外気の影響をすこしでも緩和するために置き屋根とした。2 倉は火災から守る為土蔵とするものが多いが、屋根面にも火災対策として土を葺く場合は工法上、後付け消耗パーツとしての屋根として置き屋根とした。3 夏場の暑さ対策のみならず、寒い地域では冬場の氷柱対策としても効果的等々が考えられる。
以前長野県安曇野で、築200年以上経った置き屋根土蔵の解体現場に幸運にも立ち会うことができた。
その時の調査では、置き屋根は屋根に土をかぶせたあと合掌による木組みで、その名の通り置いてあるだけで下部の構造軸組みとは拘束されていなかった。つまり屋根は本当に乗せてあるだけ。「すごい強風の後は、時々屋根が田んぼの中に落ちてたよ。」という話も聞いた。なるほど本体の土蔵は強固に構え、傷みが進行しやすい屋根部は消耗品として考え、寿命が来れば葺き換えているということだ。長い目で見ればまったくもって合理的である。
小屋裏にじゅうぶんなスペースを取らなくなった現代の住まいづくりにおいても、屋根通気や壁通気は熱環境制御には効果的であるが、デリケートなつくりになりおおらかさに欠ける。15年ほど前置き屋根をつくる機会にめぐまれ現代版置き屋根の家を設計した。それは倉庫のようなワンルームの住まいで、夏場にエアコンのみで対応するには室内ボリュームが大きすぎた。そこで夏場の遮熱対策として置き屋根を採用した。評判はすこぶる良い。以来添付の写真のもので4軒目になる。もちろん伝統的置き屋根工法とはちがい、乗せるだけというわけにもいかないので、屋根は本体軸組みと緊結している。その場合は内外を貫通する金物によるヒートブリッジには気を使うことになる。やはり本来は乗せるだけ〜というのが正解かもしれない。「ときどき飛んでいったよ〜」がゆるされていた時代に思いをはせる。
*日本では酒田にある山居倉庫が有名。これは夏場のフェーン現象に拠る暑さから倉の米を守る為の置き屋根。世界に目を向けるとスウェーデンにある名建築らるふ・アースキンの自邸(わたしの大好きな住宅の一つ)は北国の置き屋根住宅である。
すのこ状のベランダ
スノコ状のベランダ
ベランダをつくる場合はスノコ状のものを基本としている。
昨今は木造でもべニア下地の上に防水塗装やFRP、シート防水などを施しベランダをつくることが多い。結果RC造と同じような形状になるが、それは結局空中にプールをつくる事にひとしい。ケミカルな素材は進歩しているとはいえ、耐久性をべニア下地のこれらにゆだねることには抵抗がある。これが、ベランダをスノコ状のものでつくる大きな理由である。
スノコ状のベランダをつくる場合留意していることは次のようなものである。
1 廊下の様な幅の狭いベランダは物干し場かエアコンの室外機置き場としてしか機能しない。もう少し奥行きを確保してまとまった形状とすることで屋外の部屋のように利用することが可能になる。
2 スノコ上部には必ず屋根を設ける。もちろん吹き降りの時はスノコに直接雨はあたるが、通常の雨で直接雨があたらなければ風通しの良い場所であることもあり、桧の厚板などは簡単には傷まない。もちろん長期的に傷んだ場合もすぐに発見でき、張り替えも容易である。
3 建物本体との接合部(とりわけ水の動き)は詳細に検討し台風などにそなえる。
物見台
物見台
誰でも一度くらいは屋根のうえにあがったことがあるのではないだろうか。
縦方向への視点の移動は大きく世界を変える。
いつもは見えない遠くの眺めや、街の風景。
ボーっとしている時間がうれしいものだ。
建っている場所や、建物形状にもよるが「屋根の上に出られるようになりませんかね〜」という要望は時々ある。
気持ちは十分わかるだけに、なんとかしたいとつい頑張ってしまう。
ウッドデッキをつくる場合は、耐久性や使い勝手のことも考え、このところ必ず屋根を掛けることにしてはいるのだが、こうした物見台の場合は例外的に木材は雨ざらしでの使用となる。したがって使える木材はジャラ、イぺ、ウリンなど鉄木とよばれる密度が高く重い南洋材が基本となる。針葉樹系のもの(下段写真)でも耐久性を謳った材料はあるにはあるが、経験的に言うと先のものには及ばないので、定期的メンテナンスが必要ということになろうか。
まあいずれにしても酔っぱらって屋根から落ちたりしない様、くれぐれも注意して愉しんでもらいたいものだ。
屋根のある屋外
屋根のある屋外
すまいの一部に屋根の掛っている屋外空間があると生活の幅が大きく広がる。
深い庇の縁側や、軒下といった場所も同様な可能性をもつが、できればある程度のまとまったスペースを確保してこれに屋根を掛け、屋外室とでもいうべき場所が持てるとなお良いと思う。コンパクトな家では居間つづきに配置し、居間を開け放すと一体となる配置が理想的かもしれない。
友人との宴会やパーティーなどの使用のみならず、日曜大工や靴磨き、道具のメンテナンスや工作など、室内でやるには少々むりがある日常行為は意外と多いものである。ひとりの時でも、季節によっては、本を読んだりお茶を飲んだりも気持ちいいものだ。雨や直射日光をあまり心配せず使える屋外は、本当に快適で貴重な場所だと思う。
「そうは言っても、本当に屋外が気持よく使えるのは一年を通して考えると春先と秋口だけじゃないの?夏になると蚊や虫も出てくるし・・・・・」という声も聞こえてくる。そのとおりかもしれないが、本当に屋外が気持ちいいその時期を首を長くして待っているのも悪くはないだろうし、ちょっとした工夫をするだけで使える期間もどんどん伸びるはずと個人的には考えている。
物干しバー
窓辺の可動式露台
窓辺の露台
天気の良い日は気持ちのいい窓辺に腰掛けて時間を過ごしたい。
窓台や枠の部分でもよいのだが、できればもう少しゆったりと腰をおろして縁側的利用ができればそれに越したことはない。この家は2階にリビングがあり、地面に縁台を置いてというわけにいかないので高欄にちょっとした仕掛けを施した。
建具を全て戸箱に引き込み、普段は高欄に納まっている格子をパタリと倒すと窓台と同じ高さに露台が出来上るという具合。セットすると幅は約50cm程度。これだけの幅があれば胡座をかいて本を読んだり、作業をしたり。場合によっては寝転がることもできる。
もっとも高欄の隙間から落ちてしまわぬよう注意は必要。
半密閉式石油ストーブ
「紅葉園の家」で簡単な火入れ式を行った。
今回初めて採用する煙突の付いた灯油ストーブだ。正式には半密閉式石油ストーブというらしい。これまで薪ストーブは何度も設置採用したことがあるが、煙突付きの石油ストーブは初めてのことだ。薪の調達や使い勝手の面で薪ストーブ使用に二の足を踏んでいた施主が北陸地方で良く見かけるこちらのストーブ採用を決めた。暖房出力は11.0KW(9,460Kcal)と強力。屋外に200Lのタンクを設置し、設置周辺部は薪ストーブ並みの防火パネル、めがね石など念入りに施工。状況によっては遮熱板も検討中。
コックを開くとじわじわと灯油がしみだし、種火状態で≒7分。後正常運転へ。室内にほとんどにおいも出ず炎もきれい。
暖房能力は問題なさそうだがサテサテ燃費はいかがなものか・・・・ひと冬使ったらリサーチしてまた報告します。
石切り場(施主参加の施工)
建物前の駐車スペースどう仕上げるか?コンクリートを打ってしまえば事足りるが、風情もなければ夏場の照り返しも悩ましい。
砂利敷きでも良いが、なんか今一つだね〜
「割石を敷けると良いね。」と言いながらも、プロに頼むとなかなか高価なものとなる。
いっそのこと、すこしづつでも自分でやってみるかと腰を上げた伊藤さんご夫妻。
造園家の伴ちゃん案内・指導のもと多治見の採石場に到着。
「なんか仮面ライダーのショッカーが出てきそうな所ね。」という奥さんの呟きには笑った。確かに日常生活では訪れない場所だ。
「できるだけ平面の多い石を選んでください。」と伴ちゃんの指導のもと私も含め4人でトラックに積み込み。数時間で積み込み終了というか、暑くて今日はこれまでというか・・・
昨年夏のことである。
現場に持ち込んだ石を敷き込んでいく。
伴ちゃんが最初のところだけ指導。
伴ちゃんが選んだ敷き込み方は、セメントを一切使わない空敷き込み。「もっとも土地にやさしいし、しばらくすると目地から草や苔も生えてきていい感じになる。」とのこと。話としては良く分かるが、伴ちゃんそれってもっとも難しいやり方なのでは・・・・・
仕上がりはおいおいHPでアップします。